cushuは“新潟のおいしい”の合言葉です。

新潟の日本酒

おいしさの秘密

 

2 キーワードから探る

新潟のお酒のおいしさを支える動きの中で、一般にはあまりなじみのない言葉があります。でもそれは、新潟の日本酒を語るうえで欠かすことの出来ない、鍵となる言葉です。そのキーワードについて具体的に紹介していきましょう。

―― 新潟清酒学校とは

「学校」と聞くと、どこかに校舎があり、学生が学ぶところというイメージがありますが、この学校はちょっと違います。固定の校舎はありません。教室は酒造組合の会議室や新潟県醸造試験場、はたまた県内の各酒蔵。入学資格があるのは県内の酒蔵の通年雇用者で、経営者の推薦を受けた35歳以下の人。修業年限は3年間、定員は1学年約20名。その生徒を指導するのは、醸造試験場の先生や県内酒蔵の技術者、杜氏たちです。
  新潟清酒学校は1984(昭和59)年に新潟県酒造組合が新潟県醸造試験場と連携し、全国に先駆けて創立されました。目的は若手技術者の育成。2009(平成21)年現在、卒業生は約400名、そのうち20名以上が杜氏として活躍しています。入学式、卒業式のほか、毎年夏には学校祭が開催され、卒業後3年を経た人たちの体験発表や記念講演、同窓会主催の利き酒選手権が開催されます。このように清酒学校では同窓会活動も盛んで、単なる個の人材育成ではなく、新潟県酒造業界のネットワーク作りにも大きな役割を果たしています。情報交換とともに、いい意味でのライバル意識が生まれ、新潟清酒の酒質向上につながっているのです。

―― 校長先生に聞きました

新潟清酒学校の現在の校長先生は、小千谷市にある新潟銘醸で常務を務める山下進さんです。山下先生は1984(昭和59)年の創立から数えて4代目校長にあたります。初代は嶋悌司さん(元新潟県醸造試験場長)、2代目は鈴木恒夫さん(元醸造試験場長)、三代目は平田大六さん(元大洋酒造会長)。そして山下先生は2001年から校長を務めています。
「就任当時は校長が務まるか少々心配でした。でも、新潟県には全国で唯一、清酒専門の醸造試験場がありますし、試験場の先生方をはじめとし、能力のある技術者の方が大勢いますので、あまり気負わずに皆さんからやっていただこう、と思ったのがかえって良かった」と当時を振り返ります。山下先生は講師陣のさらなる充実を目指しました。「清酒研究会(1973・昭和48年創立)などを通して、蔵には優秀な人たちがたくさんいることがわかっていました。その人たちが社内だけなく、外でも活躍する場をどう作っていくのかが私の仕事だと思ったんです」。現在、講師陣は醸造試験場の先生や外部の専門家も含めて約30名。そのうち3分の2が酒蔵に勤務している先輩たちです。基礎科学や醸造学、清酒製造の知識や技術、法規、業界事情、清酒の知識、監督者のための基礎知識、一般常識など、それぞれが専門分野を指導しています。
清酒学校の入学式は7月、卒業式は6月に行われます。今年9回目の卒業生を送り出した山下先生が卒業式の式辞でよく話すのは「酒造りはソフト(知恵)の集まり・人」だということ。しかしながらその思いとはうらはらに、「生徒たちが年々画一化しているような気がします。「答えありきで物を考えているように思えますね」と不安をのぞかせます。「清酒学校を卒業して現場に戻ればいろいろな問題に直面します。いや、自分自身で問題を見つけ出さなければならない時もあります。そしてその答えを、講師や先生方、同窓生たちと交流しながら、自分で探し解決していく。答えは一つでなくていいのです。こういう力を養うことこそが、清酒学校の狙いであり、新潟の酒造りを支え、新潟清酒を発展させていく原動力になると思っています」。毎年8月に開催される学校祭では、清酒学校での研修とつながる卒業後研修の一環として、卒業後3年を経た人たちが体験発表を行います。山下校長をうならせるような、個性的な体験が発表されることを期待しましょう。

平成21年7月8日に行なわれた第26回入学式。12の蔵から14名が入学した

平成21年8月20日。第21回学校祭での利き酒選手権の様子。皆さん真剣そのもの

新潟清酒学校の4代目校長を務める
山下進さん

入学式後そのまま2泊3日の合宿研修に突入。3年間修学に励む