cushuは“新潟のおいしい”の合言葉です。

新潟の日本酒

おいしさの秘密

 

3 勝負酒にかける

日本酒業界にも、車でいうF1のようなレースがあります。新潟のお酒がエントリーする大きなレースは3つ。「全国新酒鑑評会」、「関東信越国税局酒類鑑評会」、そして県内外の越後杜氏が対象の「自醸清酒品評会」。これらに出品するお酒は、神経を研ぎ澄まし、蔵全体が緊張感に包まれながら醸されていきます。「けんか酒」とも呼ばれる勝負のお酒。この戦いの裏側にある蔵人たちのプライドこそが、酒造技術を高め、私たちが味わう市販酒のおいしさの原点となっているのです。

平成22年度に開催される品評会には、4月下旬審査、5月下旬発表の「平成21酒造年度全国新酒鑑賞会」、4月上旬に審査、6月初旬に表彰式が行われる「第43回自醸清酒品評会」、10月に審査、11月初旬に表彰式が行われる「関東信越国税局酒類鑑評会」があります。このコーナーではその出品酒が誕生するまでを追いかけていきます。
※取材協力 金鵄盃酒造(五泉市)、大洋酒造(村上市)、樋木酒造(新潟市)

第1回 洗米・浸漬

出品酒の造りは、寒さが厳しくなった年明けから行われることがほとんどです。酒造りの最初の工程となるのは、米をといで水に浸す「洗米」と「浸漬(しんせき)」。出品酒はザルを使って手でとぎます。1ザルに入る米は約18キロ。米の温度と水温を計り、あらかじめ浸漬時間を割り出しておきます。「半切り」と呼ばれる大きな桶や専用の容器に水を張り、そこに計量した米を入れたザルごと浸け、ひじから先をゆっくり動かし、米のかたまりをほぐすように、ていねいにとぎます。

いったん水を切り、「ため」(桶)で上から水をかけます。そして杜氏さんの合図とともに水を張った半切りにつけて、浸漬。杜氏さんはストップウォッチとにらめっこ。この時間によって、米がどのくらい水分を吸うかで蒸し米の仕上がりが決まり、酒の味を左右します。決まった時間つけたら、水から上げ、重さを量って終了。敷き布に広げてから包み、翌朝の蒸かしの準備に入ります。

■金鵄盃酒造の洗米・浸漬
1.使う酒米は仕込む3本のうち2本が越淡麗、1本が山田錦。写真は越淡麗の玄米。これを40%まで削って使う。 2.計量。 3.水温10℃の半切りに浸けてとぐ。
4.水から上げて、数え唄にあわせてため3杯分の水をかける。 5.浸漬開始 6.阿部昇杜氏が時間をチェックしながら、途中虫眼鏡で確認。
 
7.浸漬終了。水を切る。 8.計量後、いったん広げてから釜場へ移動。  

 

■大洋酒造の洗米・浸漬
1.4本すべて自社栽培の越淡麗。精米歩合は40%。 2.半切りに水を張る。水源は朝日連峰。三面川の伏流水を自家井戸に引いて使用。 3.米の水分を計る。
4.水温を計り、田澤勝杜氏が浸漬時間を計算。とぎはじめから終了までを浸漬時間としている。 5.容器に水を張り、とぐ。 6.いったん上げて水をかける。
7.半切りで浸漬。 8.9杜氏の合図で水から上げて、水を切る。
 
11.計量後、いったん広げて、吸水が均一になるよう布で包み込む